映像を作ることになった人のために 6

映像は静止画の連続です。
素晴らしい映像というものは、どの瞬間に映像を停止しても
美しいバランスで仕上がっているものです。

確かに映像は流れで見るものではありますが、
流れで見るといいけど、停止するとイマイチというものなど存在しません。

なので、カタカタと手ぶれしたい映像はダメということになります。
手ぶれするなら、見せるための手ぶれを、狙ってするということになります。

と、前置きしまして、
美しい静止画の連続の、その一枚一枚は、
どういうものであるべきかということです。

なんとなくかっこいいというものでは、全く意味がありません。
すべてに意味があって
理屈が通らなければなりません。

え?これはなぜこうなの?見ている人がそう思ってしまうのでしたら
それはもう間違いです。
作り手の勝手な思い込みでいいだろう、かっこいいだろう、こうすりゃ様になるだろうと
やけくそで作っているケースが多いものです。

としますと、あれ?これはなぜと疑問を持ちやすいカットを入れ込むのは基本的にはタブーです。
せめたカットというやつです。

以下は、私ども、セブンディで作った映像です。
この中に、そういういわゆるせめたカットというのが存在します。

 

 

スクリーンショット 2016-04-18 15.42.08

 

田んぼと梅雨の曇り空をおさえたものですが、

地平線のラインが縦の4分の1のところに来ています。普通、3分の1です。随分せめたカットです。

 

 

 

スクリーンショット 2016-04-18 15.41.44

 

紫陽花越しに見える電車をおさえたカットです。

電車を縦の半分におけばいいものを3分の1に収めています。こちらも随分せめています。

 

 

 

 

私どもで作った、ゲストハウスそらうみ様の映像です。

スクリーンショット 2016-04-18 15.40.41

 

こちらもせめたカットです。

木の陰から見える電車をおさえています。

電車が通り過ぎると、その奥にゲストハウスの玄関が映る仕組みです。

 

このようなせめたカットを入れるようになった理由は、
単純にいろんなかっこいい映像を見まくった結果、
せめたカットを使用していることがわかったからです。

また、写真の世界では、
若い人の間で「ニッパチ」と呼ばれる、
全体を10とするとき、伝えたいもの写したいもの見せたいものの割合が2である
という画角が流行っているということで、
取り組むようになりました。

全体の中でギリギリまで見せたいものの面積を狭くするという技法です。

撮影しているときは、
正直、ここまでせめて大丈夫か?とビクビクするものです。
2:8ということは、見せたいものが2であるため
見せたくない背景部分が8もあるわけで、
下手すると8の背景の部分を伝えてしまうことになりかねません。

上のせめた3カットで言えば、田んぼのカットは、田んぼが2、空が8となっており、
そうしますと、どちらも動かないものですので、単に空の方が目に入ってきてしまい、
本来のニッパチの効果はなしていないとうことになります。

紫陽花越しの電車のカットは、動いているのが電車だけですので、
電車だけにピントを合わせることで、それ以外を見えにくくし、
電車に焦点を合わせ、せめたカットの効果はできているのではんないでしょうか。

このように色々判断してから編集で使う使わないを決めますので、
せめたカットを沢山撮っても、実際に使用できるのは一部です。

 

かっこいいカットを意味なくつなげても何にもなりません。

海外の音楽PVなど、かっこいいだけのように見えますが、
細かく一コマ一コマ追っていくと、
ただかっこいいだけに見せてしまう
それだけの意味が理屈がすべてのカットにあります。

なんとなください。
なんとなくわからない。
なんとなくバタバタしている。

視聴者側としてそういう感想は、製作者側より的確です。
意味や理屈を考えず制作しているクリエーターをは名ばかりはたくさん存在します。

そういう人に限って、高く見積もりを出したりします。
そういう人に騙されないように、

制作を依頼する方は、
自身が小さな会社だからと遠慮したりせず、

なんとなください。
なんとなくわからない。
なんとなくバタバタしている。

これは、伝えてください。

これに対して、理屈や、理由付けをせずに
なんとなくつなぎでとか、
普通こうですよ、とか
そういう説明しかできないクリエーターには
ご注意ください。