越前町 貧谷の滝の主 モクズガニ

越前町血ヶ平(ちがだいら)にある貧谷(ひんがん)の滝、
滝の周辺には大人の足首程度、
深いところでも太ももの真ん中程度の浅い水たまりがあります。

小魚は見当たりませんでしたが、
巨大なサワガニがいました。
体だけで手のひらくらいでしょうか…
片手で持てる大きさではないと感じました。
あんなに大きなサワガニは初めて見ました。
というよりサワガニがあんなに大きくなるのかと、
ちょっとショックでした。

調べたところ「モクズガニ」と言われる種類のようで、
ハサミの部分に毛が生えているのが特徴です。
別名「手袋ガニ」とも言われるそうで、
なるほど、確かに手袋のように見えます。

驚くべきはその生態です。
なんと「幼生は塩分濃度の高い海でないと成長できない」とのことで、
小さいうちは海で育ち、淡水性の川へ移動、
変態を繰り返し、川の上流まで到達する個体もいるそうです。
ここで出会ったモクズガニは、随分ツワモノのようですね。

その後、産卵期は海まで戻るそうで、
これを「通し回遊」というそうです。
「回遊」で有名なのは、みなさんご存知「アユ」です
アユは逆に淡水で育って海へ出てまた上流に戻り産卵します。

モクズガニがこういった回遊を行うのは
分布域を拡大させる繁殖戦略だそうです。
その成果?もあってか日本全国の河川に分布しているそうです。

カニのサイズで考えて海から山の上流へ行ってまた戻る…
一体どれほどの大冒険なのでしょう…。
幼生時の海はもちろんの事、
川を登る間、成熟し海へ戻る産卵期…
どのタイミングでも外敵に狙われる可能性がありますが、
ここのモクズガニの大きさ…相当長生きなのか!?
と思って調べたら、やはりどこにでもプロがいます。
下記のサイト、徳島大学で13年モクズガニの生態を調査したレポートがありました。

徳島の自然と食材と研究と
http://web.ias.tokushima-u.ac.jp/aragimo/page29/page31/page31.html

このサイトの図を見るに、
4年目の最大サイズくらいの大きさに近かったと思うので、
推定で4年くらい生き抜いてきた個体なのかもしれません。

繁殖期に川をくだり、産卵を数回行い、
繁殖期が終わると疲弊して死ぬそうです。
あわよくば、近くに寄った際はもう一度出会っておきたいと思いました。
すごいパワーを感じたのには、
こういった自然界の厳しい日々の環境を
屈強に生き抜いてきたからなのでしょう。
ありがたや、ありがたや。
ふらっと寄っただけだったのに、
素敵な巡り合わせでした。